【読書感想】世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコのレビュー【増田ユリヤ】
RNAワクチンって、なんか凄い勢いで出てきて急に承認されたイメージでしたが、
このカタリンカリコさんの40年の研究があったからこそ、そのスピード感で開発できたのだなぁということが理解できる本でした。
・概要
前半はこの人のこれまでの人生についてでした。
研究者としてあまり良い扱いを受けて来なかったけど、自分の信念を曲げずに40年研究を続けたネバーギブアップ精神が書かれていました。
1つのことを諦めずに挑戦し続けるのってすごく難しいことだと思うので、人として尊敬しました。
後半はこの人の研究成果についても触れられており、
大変勉強になりました。
mRNAによるタンパク質の生産は、40年前から注目はされていたそうです。
しかしmRNAを細胞内に入れると炎症反応が起きてしまい、これがどうしても乗り越えられず、大半の人が諦めたそうです。
そんな中この人の研究チームがtRNAを細胞に入れてみたところ、炎症反応が起きないことが分かりました。
そこでこの2つの違いを調べたところ、tRNAのウリジンに、mRNAにはない修飾がついていました。
そこでmRNAに同じ修飾(シュードウリジン)をつけたところ、炎症反応が起きなくなったそうです。
ちなみに現在は更に修飾を加えたメチルシュードウリジンというものを付けているみたいです。
つまり生物が作るmRNAとはちょっと違うものを生み出したら炎症が起きずにうまく行くようになったということですね。
またRNAはすごく分解されやすいです。
自分も研究で扱う際に分解させまくってとても苦労しています。
しかしこの人達はmRNAを脂質の膜で覆うことで安定性を高めることにも成功したそうです。
とはいっても1週間位で消えるみたいで、体内に残りすぎないことで安全性が高くなっているんだそうです。
このような技術のもと、炎症反応を起こさず細胞内でタンパク質を作らせるRNAワクチンという仕組みが完成したんですね。
あと知らなかったのですが、コロナウイルスのRNAワクチンは、
ウイルスの膜についているトゲトゲしたスパイクタンパク質だけを作らせるようになっているんですね。
すごく考えられているんだなぁと思いました。
・感想
専門用語が多くなって申し訳ないです。
しかしこの本の中では専門用語の説明もしっかりされているのでもっとわかりやすいと思います。
僕はある程度専門分野ではあったので、非常に理解しやすくためになる本だと思いました。
今後mRNAワクチンが一般的になったり、mRNAを用いた病気の治療とかも出てくる可能性があるみたいなので、
興味がある方はぜひ読んでみてください。