venenatum’s blog

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【読書感想】生命科学的思考:遺伝子に抗い、生物学をビジネスに応用する


遺伝子や進化といった生命科学から人間の行動を分析して、それをビジネスにも応用しようという本でした。

「生物系は就職難」と言われていて、自分も就活中に実感していたので、工学部とかに行けばよかったなぁと思っていましたが、

この本を読んで生命科学の面白さを再認識し、やっぱり生物を勉強していてよかったなと感じました。

生物を学んでいる人はぜひ読んでみてください。

 

 

遺伝子や進化についての有名な本に、「利己的な遺伝子」というものがあります。

その中に「すべての生物は、遺伝子を運ぶための生存機械だ」という言葉があるそうです。

詳しく言うと、生物はまず個体の生存、次に種の繁栄に向かって行動するように、遺伝子的に作られているということです。

これは以前に紹介した「スマホ脳」にもつながってくる話だと思います。

 

venenatum.hatenablog.com

 

 

その中で人間は、生命の原理や原則を客観的に理解した上で、

「遺伝子に抗うことができる」「自由意志が存在する」と信じること、

そして「視野」を設定することで実際に行動をコントロールできる、

といったようなことが書かれていました。

 

例として、快楽と幸福について書かれていました。

快楽はスマホとか甘いものとか短期的なもので、

幸福は豊かな生活とか健康とか長期的なものになります。

遺伝子に従っていると、快楽が得られる方向に行動してしまいます。

勉強したほうがいいのにスマホを見てしまったり、運動したほうがいいのに体に悪そうなお菓子を食べてしまったりと。

スマホ脳にも書かれていましたが、これは人間がサバンナに生きていた時代の生存戦略的には正しい行動と言えてしまいます。

 

しかしそこで「遺伝子に抗うことができる!」と思うこと、

また時間的な視野を広げて、勉強をしたらより豊かになれる、運動をしたらより健康になれる、といった長期的な視点を持つことで、

短期的な快楽を我慢して、長期的な幸福に向けた行動をすることができる。

ということだそうです。

 

この話を聞いて、自分や人の行動を見て、遺伝子に従っているのか、抗っているのか、

とか考えるようになりました。

ついつい短期的な快楽に手を出してしまいがちですが、

「遺伝子に従うものか!」と思って、長期的な幸福を手に入れたいですね。笑

 

 

後半はそんな生物の遺伝子や進化という考え方を、ビジネスに応用しようという内容になっていました。

面白かった内容を3つ紹介します。

 

1つ目は、社内の人に多様性をもたせることで、環境の変化に対応しましょうと言う話です。

生物多様性とか、生物の種内の多様性とかが高いと、地球環境が変化しても生き延びることができる個体が増えますからね。

この変化の激しい時代、企業も多様性をもたせましょうということでした。

ただこの「多様性」の考え方には注意が必要で、

企業では年齢、性別、国籍といった多様性が必要なのではなく、

企業理念に共感しているという同質性を前提として、知識や能力や価値観の多様性をもたせることが重要みたいです。

確かに、多様性を誤解している企業もありそうだなと思いました。

 

2つ目は生物の代謝のように、エネルギーを利用して努力することで、企業も変化して生きていこうという話です。

何もしないとどんどん崩壊していくぞ、ということですね。

個人としても、油断すると部屋がめちゃくちゃ汚くなったりしますからね。笑

 

3つ目は生物もビジネスも成長はS字曲線を描くので、それぞれの段階に応じた対応をしようという話です。

この事業は成長前の段階なのか、成長中の段階なのか、成長しきった段階なのかを判断して行動しないと、大変なことになるぞということですね。

 

遺伝子とかについて勉強すれば生物としての本能がわかるわけだから、

それをビジネスに応用できるなら最強だよなぁ

って思いました。

生物に触れたことが無い方は若干難しいかもしれません。

しかしビジネス的に大事なことがたくさん書かれていたので、興味がある方はぜひ読んでほしいですね。